APIデータを活用したデジタルマーケティングの可能性と課題

自社が保有するロジスティックス・ノウハウやサービスをAPIとして提供しているMINIKURAであるが、今回はAPIをマーケティング的な観点で捉えていく。エンジニアリングの文脈で語られる事の多いAPIだが、次世代におけるマーケティング戦略を具現化していく上で、APIの活用は欠かせないものになる。2018年までに2.2兆ドル(260兆円)に達すると言われるAPIエコノミーが持つインパクトと共にご紹介したい。

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戦略思考の背後にある思想が変わりつつある

戦略思考の背後にある思想が変わりつつある

アルフレッド・チャンドラーは、20世紀初頭のアメリカ経済の発展メカニズムを、大量生産と、それを可能にした流通インフラ・企業の組織構造であるとした。「モノの大量生産」の文脈で語られる”規模の経済性”を実現するには、巨大な生産設備への投資と、取引コストを最小限に抑える手段としての垂直統合型の組織を必要とした。垂直統合型の組織、その組織を効率的に運用するための中集権的なヒエラルキー構造は、モノの大量生産を達成するために必要不可欠なことであった。「組織は戦略に従う」という命題は、あまりにも有名であるが、この命題における戦略とは”モノの大量生産”をいかに達成するか、ということに対する論理の積み重ねであった。そして、この命題が一般化されてから1世紀近く経ち、モノに溢れた私たちはいよいよ新たなパラダイムを構築しなければならないのであるが、私たちは、「戦略=モノの大量生産をいかに達成するか」という論理体系から簡単に抜け出すことはできていない。

例えば、「モノの大量生産をいかに達成するか」という戦略において、もはや芸術の域にまで達した代表例がトヨタ生産方式であり、ジャストインタイム、リーンなどである。色々な呼び方はあるであろうが、この戦略思考を未だに我々は信仰しているように思う。

しかし、歴史を紐解けば分かるように、トヨタ生産方式の発想の種は100年前のアメリカにあった。そういう意味で、日本は、未だにアメリカに背中を追いかけ続けていると言ってもよいしれない。

一方で、本家のアメリカは、”モノの大量生産”を背景とする戦略思考をきっぱりと捨てたように思う。彼らはモノに溢れた社会状況において生産の文脈における”規模の経済性”を追求していくことの限界を見極め、早々と新たな戦略シフトを実行した。そのシフトとは、モノからソフトウェアへ、垂直統合から水平型のネットワークへと言える。この真逆のシフトによって、考えられる戦略思考に必要な論理はまったく異なるものとなるであろう。

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マーケティング思考の根本的な変化

マーケティング思考の根本的な変化

これまでのマーケティング活動は、モノの大量生産という戦略目標に従属する形で展開されてきた。つまり、生産量を増やすためのマーケティングであり、とにかくモノを売ろうとするマーケティングである。しかし、新しいマーケティング活動とは、使い手を増やすということを第1目的とする。この目的はを達成しようとする限りにおいて、そのマーケティング活動は「売る・作る」ためではなくなり、むしろ「引き合わせる」ためのマーケティングに変貌する。この「引き合わせる」とは、モノ・サービスの使い手を増やすために、階層的なエコシステムを構築したり、あるいは、APIを公開したりすることが含まれる。売るモノ・サービス開発パートナーと引き合わせるなど、その射程は組織の境界を超えて考えられるべきもので、オープンなマーケティング活動とでもいえるかもしれない。

私は、APIを活用したデジタルマーケティングとは、上記の”モノの大量生産”を追い求める作る・売るためのマーケティングから、引き合わせることを目的とするマーケティングへの移行という文脈において理解すべきものであると考えている。それは、大量生産・大量消費の時代の終焉を反映した、新たな時代のマーケティング思考である。この動きを従来のパラダイムに沿って考えようとする限り、その真価をとらえることはできないだろう。あるいは、単に米国でAPIマーケティングがきてる、というだけで盲目的にAPIデータをマーケティング活動に応用しても意味がない。その背景にある、根本的な世相の変化を捉え、その本質を掴んだうえで、APIデータを活用したデジタルマーケティングについて考えていきたい。

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API公開によってユーザーとの接触点を増やす公益サービス企業

API公開によってユーザーとの接触点を増やす公益サービス企業

APIデータのマーケティング活用として最も基本的なパターンはビッグデータの公開である。例えば、NXCO東日本のような高速道路を管理している企業が、高速道路上にセンサーを無数設置し、そのセンサーによって集計された交通情報データをAPI公開するとしよう。すると、そのデータは、その企業に所属していない個人プログラマーが、いつでもアクセスできるようになる。仮に、そのプログラマーが、この交通情報のAPIデータとGoogleMapsAPIを掛け合わせてGoogleMaps上に渋滞状況をリアルタイムで表示できるサイトを構築すれば、高速道路を利用するユーザーにとっては非常に便益のあるものとなるであろう。

さらに、このサイト上に高速道路の区間料金を検索できる機能も実装するとする。もちろん、この機能の実装にも、高速道路会社が区間の料金データをAPI公開している必要がある。すると、今度は、渋滞状況を回覧しにきたユーザーが、どんな検索行動を起こし、どの場所へ向かおうとしているのか、というデータを集めることができる。

このようにAPIデータを公開することによって、外部のプログラマーが有志で作成したサイトが、さらに価値あるデータを生成するというサイクルを生み出すことが分かる。特に、ユーザーの検索行動に関するデータは、未来の渋滞状況を予測するために貴重なデータになるであろう。そして、そのデータは、サービスエリアの飲食店の需要予測にも役立つだろうし、高速道路を活用しているユーザーの利益もさらに増やすことができる。
この事例において、もっとも特筆すべき点は、高速道路を管理している会社は、APIデータを公開したことによって、自社の道路状況をリアルタイムで伝えるアプリケーションが”無料”で開発され、かつ、これまで手に入れることのできなかった新たなデータへのアクセス権を得られたことだ。そして、このようなアプリが開発されることでユーザーの利便性は上昇し、高速道路の利用者が増えるというマーケティング活動が成立している。しかも無料で。
引き合わせるマーケティングとは、他社を巻き込んだ戦略のため、既存のパラダイムにとらわれている限り、なかなか実行できないものかもしれないが、だからこそ、より戦略的な思考が試されることが理解できるのではないだろうか。

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データの価値を知っている企業の分かれ道

データの価値を知っている企業の分かれ道

データの価値を知っている企業と知らない企業がある。知らない企業はさておき、知っている企業の中でも、そのデータの価値を、どのように捉えるべきか、という点において2つの立場があるように思う。

1つ目の立場は、膨大なデータを占有し、データへのアクセス権および使用権を制限する企業である。この立場は、GoogleやFacebook、LinkedInなどが含まれるだろう。彼らは、ユーザーに関する膨大なデータを保有しているが、一部を除き、APIデータとして公開することは限定されている。その変わり、データを最もたやすくお金に変えられる広告商材として、自社内で加工・編集している。

2つ目の立場は、膨大なデータを公開し、かつデータへのアクセス権・使用権もフリーとして、そのデータを基底とした生態系をつくろうとする企業である。この生態系を大きく成長させる主人公は、有志の起業家やエンジニアである。有志の起業家・エンジニアは、このデータを活用すれば面白いアプリケーションが構築できそうだと考え、それを実行に移す。構築されたアプリケーションは、APIデータ提供企業と一定のルールを守る限りにおいて、基本的な自治権は付与されている。だから、彼らは自発的にアプリケーションを進化させるインセンティブがある。だからこそ、ますます生態系が大きくなっていく。この立場にたつのは公益サービスを展開している政府系の機関が多く、営利企業では、まだまだ少ない。が、事例をあげるとするならば、minkuraAPIやRicoh Theta APIなどがあげられるだろう。minkuraAPIはminkuraが提供している各種機能をAPIとして公開することによって、新たなサービスを次々と生み出し、結果として、ユーザー数を300%まで増やしている。RICOH THETAとは、360度の映像を撮影できる機器であるが、これを外部からコントロールできるAPIを公開し、360度の映像に3次元CGの画像を合成できるソフトや360度映像をつなげて旅行記を作るソフトなどが開発された。これらの開発コストは(寺田倉庫にとっても、RICOHにとっても)0であるが、両社のユーザー数は確実に増していることが分かる。
売るためのマーケティングではなく、引き合わせるマーケティングによって成功している企業として理解いただけるかと思う。

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APIエコノミーのインパクト

APIエコノミーのインパクト

APIエコノミーの市場規模は2018年までに2.2兆ドル(260兆円)になるといわれている。アメリカのGDPが約18.5兆ドル(約1850兆円)なので、APIエコノミーは、アメリカのGDPの13%程度を占めることになる。これは、とんでもない数字である。どういった算出根拠なのか詳しくは分からないが、この予想を行っているIBMは、世界中に存在するありとあらゆるものがAPIによって繋がり、そして、それによってもたらされるありとあらゆる経済効果をまとめれば、これだけになるということなのだろう。この壮大な経済的インパクトをもたらすAPIエコノミーの一端を垣間見てみよう。

まず、APIエコノミーにおいて注目すべき領域はやはりロジスティクスであると私は思う。(世の中的にはFintechが盛り上がっているが、その経済的・社会的インパクトからすれば比較にならないと個人的に思う)
例えば、倉庫は日本全国で3300万平米の保管残高がある中で(http://www.mlit.go.jp/statistics/details/kamotsu_list.html)、その利用率は50%程度である。さらに、全運送用トラックの積み荷率は全体平均で50%程度(国土交通省データより)である。ここで、全倉庫と全運送用トラック、そして貨物の動きを企業の枠をこえたAPIでネットワーク化することができれば、ロジスティクスを劇的に改善できる。この効果は、企業の運送コストやリードタイムを劇的に改善し、二酸化炭素排出量の削減、社会全体の生産効率の革命的な上昇に役立つだろう。

次にエネルギー分野では考えてみよう。太陽光発電や風力発電のエネルギー変換効率は、ムーアの法則が適用されるほどの上昇曲線を描いているという。そうなると、分散された今後といって久しい例えば、と言われているし、各トラックには契約している倉庫があり、その倉庫以外には使えないという不経済がある。しかし、ロジスティクスの流れをAPIとして連携させることで、トラックの積み荷率あげ、トラックが契約に関係なく純粋に荷物を運ぶことだけに徹することができるならば無駄な在庫保管料を削減することができるであろう。ちなみに、日本国内における運送の市場規模は18兆円あると言われているが、ここにAPIエコノミーによる革命がおき、積み荷率が25ポイント改善されるだけされれば、運送コストは劇的に改善されるだろうし、運送スピードもますます改善される。結果として、運送の市場規模はますます大きくなるであろう。

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さらに詳しく

【日本IBMが考えるAPIについて知りたい方は】

260兆円規模のAPIエコノミーに遅れる企業とは

FinTechの勃興は、ユーザー目線を持った各種スタートアップと金融業界がAPIを利活用したことによるものといえよう。各社の得意な技術をAPIという形で交換し合う経済圏(APIエコノミー)の発達が、新しい金融サービスを生み出した。拡大中のAPIエコノミーに着目するIBMから、シニアアーキテクトの早川氏を招き、APIエコノミーおよびMINIKURAのAPIについて訊ねた。 記事を見る
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【スタートアップにロジスティックス・テクノロジーのAPIを提供するMINIKURAの実態はこちらから】

MINIKURAの数字物語 サービスロウンチまでの5つのキーナンバー

1,400万アイテム、3か月+3か月、200API、∞ が持つ意味とは何でしょう。本稿では、MINIKURA APIを通じた新サービスの開始までに、経営者や開発エンジニアが気にするであろう多岐にわたることを5つの数字で説明する。その数字が物語るMINIKURAの実力や実績を知っていただきたい。 記事を見る
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