シェアリング・エコノミーの真価は「モノの移動」にこそ潜む

シェアリング・エコノミーを語る上で、見過ごされがちな領域がある。UberやAirbnbのように「人の移動」に注目が集まる一方、人の移動と同等以上の社会インパクトをもたらす「モノの移動」、言い換えれば「モノのシェア」に対する注目が十分ではないように感じる。
モノがインターネットのようにネットワーク化されたらどうなるか?どんな新サービスが生まれるのか?
MINIKURAのように、それを具現化するためのロジスティクス・テクノロジー(LogiTech)は既に存在しているため、まずはシェアリング・エコノミー ×モノの移動というポテンシャル領域を本記事ではご紹介していきたい。

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まだまだパラダイムシフトをもたらすシェアリング・エコノミー

シェアリング・エコノミーとは、個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスによって成り立つ経済圏のことを指す。例えば、私の家に、ほぼ使っていない部屋があった場合に、その部屋を貸会議室として他人に貸し出すことで、私は収入を得ることができ、また、会議室を探しているユーザーは正規の会議室を借りるよりも安価に利用できるというメリットがある。モノにあふれた時代だからこそ、モノやスペースを占有的に利用するのではなく、共有的に利用することで、モノの貸し手も借り手もwin-winの関係を築くことができる。大量生産型の経済パラダイムに代わる新しい経済パラダイムとして注目がされている。

では、シェアリング・エコノミーがどういったインパクトを及ぼすのか、ということを考えるために、シェアリング・エコノミーが駆逐していく可能性のある代表的な市場をピックアップしてみよう。まず、ホテル市場3.7兆億円、レンタカー市場0.6兆円、タクシー市場1.7兆円、陸上運送市場18兆円などが考えられる。ざっと、これだけでも22.6兆円のポテンシャルがあるということが分かる。この数字は日本市場に限った話であるから、全世界的な動きとして考えてみると、そのインパクトの大きさを理解できるはずである。もちろん、この場合のインパクトとは、まったく新しい市場が立ち上がるというよりも、これまでの経済パラダイムで成り立っていた様々な市場が、シェアリング・エコノミーに置き換わるという意味で、市場のパイを増やすといったインパクトではない。シェアリング・エコノミーによってもたらされる真の価値とは、その新たなパラダイムである。すなわち、モノを買い占有し、お金を蓄積することだけを考えるのではなく、今ある遊休資産を共有し、地域社会あるいはグローバルに社会的関係資本を築いていこうという思想と実践をもたらすことこそが最も重要な観点である。つまり、持続可能な社会を実現するための、最も筋の通った、そして現実的な案であることが最も注目すべきインパクトなのである。

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シェアリング・エコノミーの代表的企業に隠されがちな領域

シェアリング・エコノミーの代表的企業に隠されがちな領域

シェアリング・エコノミーの代表的企業といえば、ご存じの通り、UberとAirbnbであろう。Uberはタクシー市場、Airbnbはホテル市場、それぞれに新しい選択肢を提示し、多くのユーザーから支持をもらっているし、シェアリング・エコノミーの話題といえば、この2社のものが多いように思える。

しかし、そのことによってシェアリング・エコノミーにおいて注目すべき領域が、隠されているように思う。なぜなら、UberやAirbnbのような人間の移動に関する領域に注目がいき、モノの移動に関するシェアリング・エコノミーには注意が払われていないように思えるからだ。再確認しなければならないことは、モノの移動は、人間の移動と同等以上のインパクトがあるということだ。というのも、運輸業は34兆円の市場規模があるが、うち旅客運送が10兆円、物流運送が24兆円もある。人の移動と比較してモノの移動にかかわる経済規模は2倍以上あるのだ。市場が大きい分、その課題解決のインパクトも大きいのである。さらに言うと、モノの移動は人間の移動以上に、インターネットのP2P通信のメタファとして捉えやすいので、IoTの時代においては、ますます注目されていく領域であろう。この領域について、もう少し考えを進めていきたい。

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ロジスティクスに関わる見逃しがちな遊休資産の存在

トラック輸送事業社数は62910社あり、トラック台数は1,377,292台ある。これら輸送用トラックの実働率は70%であり、積載効率は48%である。ここで、実働率、積載効率がそれぞれ100%達成された理想的な状況を100として考えてみると、現状の輸送用トラックは33.6%しか利用されていないということである。もちろん、この33.6%という数字の理由は、ロジスティク業界だけの問題ではなく、交通インフラの問題などが複合的に絡んだ結果であろうが、輸送用トラックにおいて多少の遊休資産が存在していることを確認できる。

しかし、さらに、注目すべき観点がある。
それは、自家用トラックの存在である。

自家用トラックの台数は6,179,447台あり、事業社用トラックの約4.5倍の数である。
もし、これらの個人用トラックを含めた遊休資産をネットワーク化できれば、ということを想像してみよう。事業社用、自家用トラックの垣根なくネットワーク化したとき、そこにどんな効果があるのだろうか。

陸上運送は18兆円の市場規模がある。そこに、自家用トラックがネットワーク化されれば現状のトラック数4.5倍の積載量が実現できる。今後、ますますEC市場やロジスティックスを活用するサービスが増えていく中で、この自家用トラックという見逃しがちな遊休資産をロジスティクスネットワークに参入させることで、ロジスティクスおけるシェアリング・エコノミーのインパクトは恐るべきものであることが容易に想像つく。

アメリカにコヨーテロジスティクスという会社がある。この会社では、4万社の運送業者と契約し、これをネットワーク化し空トラック(回送車)をなくしている。彼らは、トラックの効率活用を目指すべく、空トラックと貨物を適切にマッチングさせるアルゴリズムを開発した。これにより、コヨーテロジスティクスは、2012年だけで、空トラックの走行距離を約885万キロメートル削減し、CO2の排出量を9000トンも抑え、顧客に900万ドルを還元した、という。

そして、2015年、コヨーテロジスティクスはUPSに日本円にして約200億円で買収された。これによって、UPSの広大な物流ネットワークと接続し、ますます、空トラックと貨物のマッチングのアルゴリズムの影響範囲を広がっていくことだろうと考えられる。現在は、まだまだ事業社用トラックだけのネットワーク化だけであるが、ここに自家用トラックがネットワークに取り込まれることで、さらに大きなインパクトを及ぼすことであろう。

このように、ロジスティクス業界におけるシェアリング・エコノミーの事例は徐々に出てきており、そのインパクトの大きさは社会的に認知されている。では、こういった動きは日本でも今後加速していくのだろうか。

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ロジスティクスにおけるシェアリング・エコノミーを阻害する3つの課題

ロジスティクスにおけるシェアリング・エコノミーを阻害する3つの課題

日本においてもコヨーテロジスティクスのような事例が出てくるのか、あるいは、さらに進んで自家用トラックという見逃しがちな遊休資産をロジスティクスネットワークに参入させることでできるのだろうか。それには、いくつかの課題点がある。

1つめは企業の存在である。日本全国に存在する倉庫やトラック全体の流れをロジスティクスネットワークと捉えるならば、企業という存在が、そのネットワークを機能不全にさせざるを得ない理由となる。なぜなら、倉庫やトラックには、所属している企業があり、多くの場合、企業を跨いだロジスティクス連携は実現していないからだ。単純に考えて、ロジスティクス網そのものが競争優位の源泉となる企業においては、独自のロジスティクスネットワークを他社や個人に開放し、連携しようとするインセンティブが働きづらい。

2つめは、仮に連携するにしても、それを完全に統合し、管理できるほどの情報システムが構築されていないということである。少なくとも、各社や個人が連携できるようなAPIは現在提供されていないようである。

3つめは、これが最も決定的であるのだが、自家用トラックを使うとなった場合に、単純に考えて、現在の4.5倍のトラックが道路に走ることになるが、それを支えるだけの交通インフラが日本にはない。そもそも日本の可住地面積1㎢あたりの自動車保有台数は599台であり、これは、アメリカで35台、イギリスで147台、フランスで80台であり、異常な密度なので、交通渋滞など駐車スペースなどの問題から逃れることができないと思われる。逆に言うと、こういった状況を所与として世界的にも評価の高いロジスティクスネットワークを構築している日本の凄さを理解できる。

以上の3点が日本におけるロジスティクスネットワークにおけるシェアリング・エコノミーを阻害する要因であると考えられる。では、この課題を乗り越えるためには、どうすればよいのだろうか。

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テクノロジーの進化がロジスティクスにおけるシェアリング・エコノミーの成功を後押しする

「テクノロジーがロジスティクスのシェアリング・エコノミーを後押しする一番の力である。まず、ありとあらゆる荷物は完全にトラッキングできるように電子タグが装着される。この荷物に装着された電子タグから発生する微弱な電波はインターネットにつながり、クラウド上にデータとしてリアルタイムで集計される。

そのデータは各企業が提供するAPIと連携し、どの企業のどの倉庫に待機し、どのトラックで配送されるのが最適なのかということをグラフ理論などの高度な数学的な手法を用いて算出してくれるA・Iが存在する。このA・Iは、日々のトラッキングビッグデータをもとに常に計算を繰り返し、日々性能は向上しているだろう。

加えて、自動車の自動運転技術は確立され、シェアカーも進み、可住地1㎢あたりの自動車保有台数も減り、交通インフラの様々な問題が解決できるであろう。荷物の積み荷はロボティクスの技術、配送はドローンの技術が担うことによって、生産性は現在と比較できないレベルに達しているであろう。場合によっては、データだけが転送され、発注者の一番近くの倉庫にある3Dプリンターによって、製品そのものが製造されることもある。

Uberなどの自動配車アプリにも、タクシー用途だけでなく、ロジスティクス用途向けのAPIが用意され、都心を動き回る自動運転タクシーは、時に荷物を届ける役割も担うであろう。そうなると、ありとあらゆる荷物は、ある住所に荷物が運ばれるのではなく、その人のいる場所に、タクシーが配車されるかのように届けてくれるようになるであろう。

なにより驚きなのは、この荷物配送に関わる料金は現状の10分の1程度になっていることだ。人件費がロボットに置き換わり、日々勝手に進化してくれるソフトウェアは、劇的なコスト改善をもたらす。きっと、私たちの仕事の大部分はなくなっているだろうが、多くの商品価格やサービス価格も下がっているから、それでよいのかもしれない。

こんな世の中をもたらすかもしれないロジスティクスのシェアリング・エコノミーの成功を想像してみたのである。

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