スタートアップ第2の聖地・イスラエルから見る、日本のLogiTechの可能性

日本のLogiTechの現在地 -どこに伸びしろがあり、どこに優位性があるのか- を正確に知るために、世界から俯瞰することは欠かせない。今回は、シリコンバレーに次ぐ「スタートアップの聖地」として知られ、地政学的にサイバーセキュリティ関連のテクノロジーや人材が豊富なイスラエルから見てみよう。お話を伺ったのは、2014年よりイスラエルに拠点を構え、日本のインキュベーターの草分け的存在のサムライインキュベートの榊原代表。同社は、エアークローゼットに投資している企業でもある。イスラエルのスタートアップシーンを知る榊原氏の目に、LogiTechはどのように映るのだろう。

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イスラエルのスタートアップシーンで今起きていること

イスラエルのスタートアップシーンで今起きていること

「イスラエルのスタートアップの特徴はサイバーセキュリティ関連の層が厚いということです。ピッチイベントに行くと、サイバーセキュリティ関連の企業が6〜7割に及びます。地政学的な見地から、セキュリティの知識を身につけて自分たちのことを守るというのは国家の方針であり、幼稚園からプログラミングを学び、高校卒業時にはみんなサイバーセキュリティのプロになるように教育されます。

サイバーセキュリティを究めるには、新しいテクノロジーや新しいプログラミング言語を全て学び続ける必要があり、日本でもビッグワードして叫ばれている『人口知能』を駆使して、人がどう仕掛けてくるのかを予測するようなことも実践しています。そのようなテクノロジー環境下にあるからこそ、イスラエルは世界最強の守備力を持つ国としての呼び声が高いのです。

また、自給率がほぼ100%というのも、四国ほどしかない国土を守らなければならない彼らの気持ちの表れと言えるでしょう。雨が降らないという気候条件のため、海水を飲めるようにする技術が開発されたりと、自給率を高めるためにテクノロジーが活用されています。自分たちの問題は自分たちで解決するという精神が非常に根強い国と実感しています。

他に、気質としてユニークなのは、会議するなら原則当日、という感覚でしょうか。よほどのことがない限り、当日実施、どうしてもという時だけ翌日朝ですね。会議を来週とか来月にする日本人とは全然違います。だから、とにかくプロダクト開発はじめ何事も即決で完成までが早いです。

生と死が近く感じる地理的環境にいるからこそ、その日を一生懸命に生きる、家族を心から大切にするという思いが非常に強いようにも感じます。イスラエルの同僚たちは毎週末、ご両親と食事をするそうです。日本人からすれば信じられませんが、逆に彼らイスラエル人も“日本人の感覚は信じられない、絶対おかしい”と言っています。

そういうイスラエルのスタートアップシーンを見て感じたのは、自分たちだけでどうにかしなければならないと悟ったときに新しいイノベーションが起きやすいということ。日本は市場もありますし便利すぎるので、国内にいるとなかなか気づかないと思いますが。」(榊原氏 談)

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イスラエルのスタートアップシーンから見る、LogiTechとMINIKURA

イスラエルのスタートアップシーンから見る、LogiTechとMINIKURA

「私たちがイスラエル支援している企業の1社にSPEEDUPというLogiTechに関する会社があります。その会社は、人が移動する際に誰かの荷物を持って移動し届けることで、移動費をゼロにできるというサービスを提供しています。日本では法規制上できないのですが、イスラエルは可能なのでこのサービスが普及しつつあります。

今後MINIKURAの可能性を感じるのは、シェアリングエコノミーですね。日本でも非常にこの手の類のサービスが増えていますよね。ロジスティックス関連でも、スキマ時間のある印刷所とかクリーニング屋とかを活用するサービスは最近耳にします。今までの日本の経済は大企業中心に自前主義が徹底されていました。ですが、震災もあって、資産をシェアすることに日本人も徐々に慣れてきているように感じます。

ですから、MINIKURAも、今も自社の倉庫だけではないと伺っていますが、同業他社含め日本中の倉庫をネットワークできると、まさにUBERのような世界観を構築できますよね。同業者が“競合に当たるからネットワークに参画しない”と意識することがネックだと思いますが、それを克服できれば最強の物流ネットワークを構築できるのではないでしょうか。

また別の観点からですが、エアークローゼットのようにオペレーションが大変な起業家にとって、MINIKURAから提供いただくAPIで、簡単にプロのオペレーション機能を享受できるのは良いですよね。魅力的なスタートアップが日本全体で増えるために欠かせないと思います。」(榊原氏 談)

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ニッチだけど成長する市場と、ニッチのままに終わる市場の見分け方

ニッチだけど成長する市場と、ニッチのままに終わる市場の見分け方

「ずっと報道されていながらなかなか解決されない社会問題は、成長する市場を見つける1つの鍵だと思います。例えば、産後クライシス。数年前から叫ばれ始めていますが、未だ解決できていませんよね。現段階で私が知る限り、お子さんの成長に合わせて子育てを支援するアプリはあるのですが、子育てするお母さんの体調や成長に合わせて、そのお母さん支援の方法をお父さんにアドバイスするアプリはありません。ニッチだけど流行るサービスになるかなと思います。

そして、このニッチなサービスが市場をつくれるかを見極めるには、“なぜ、産後クライシスが起こるのか?” “何が真因だったのか?”と本質的な理由を探る思考ができるかに懸かっています。実は、ある起業家は、奥さんが産後うつになってしまったので、何でも相談ができるbotを作ったそうです。ですが、そのアイデアはそもそも奥さんがなぜ産後うつになったのかを解明せぬまま思い付いたものでした。本来は夫が一番近くに寄り添って奥さんの負担を分担することが大切なのに、botをつくって負担を奥さんに押し付けようとしたのです。

これは1つの例に過ぎませんが、たくさんのピッチイベントに参加させてもらって感じるのは、誰のどういう課題を解決するのか曖昧な事業アイデアが多いということ。何が原因で、何が解決すべき課題かを考えきれていないことが多いのです。逆に言えば、誰のどういう課題を解決するビジネスかが明確であれば良いわけです。」(榊原氏 談)

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家族 × 今までのキャリア × グローバルな視点 = 出資

家族 × 今までのキャリア × グローバルな視点 = 出資

「エアークローゼットは、クラウドワークスの吉田代表からの紹介で知りました。彼のような優秀な経営者が紹介してくれるような機会はあまり多くはないので、まずその時点で少しビビッときました。

実は会った時は、エンジニアもいなかったですし、ビジネスモデルも充分には定まっていなかったですが、出資を決めました。だから、事業アイデアではなく、人で決めたという部分が大きいです。

具体的には、まず家族がいるのに起業するという天沼さんの気概です。次に、ハードな職場環境を彼が今までのキャリアで過ごしてきたので、起業をやり切れる底力がありそうとも感じました。また、ロンドンの大学を出たということもあり、グローバルな視野を持って海外を攻めることもできそうと思いました。その後、一緒に事業アイデアを練り上げていく上で、一番課題が明確だったのがファッションレンタルサービスでした。

実は、このファッションレンタルサービスはオペレーションが一番のボトルネックで、本当に実現できるのか私も不安な部分がありました。しかし、天沼さんを始め、彼ら自身の力でどうにか実現させたいという強い想いと粘り強さが、寺田倉庫等の協力いただけるパートナーを見つけることができたんだなというのが実感でした。」(榊原氏 談)

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世界を目指すスタートアップが今後5年で迎える課題とは?

世界を目指すスタートアップが今後乗り越えるべき課題とは?

「“人生を通じて何を成し遂げたいのか?その中で自分にとって起業はどういう意味をなすのか?その会社のミッション・ビジョンは何なのか?”をしっかり逆算することが一番重要かと思います。起業家であっても、このあたりの思考がまだ不十分な方が多く見られます。

私に対してよくある相談が、“今起業すべきですか?大企業に入るべきですか?やりたいことが見つかりませんどうしたらいいですか?起業のメンバーが集まりませんどうしたらいいですか?どうやったら儲かりますか?”等々が大半で、全く自分の人生を俯瞰していない方が多いです。まずは、起業理由や事業領域について“なぜ~なのか?”と自問自答し、その“なぜ?”が消えるまで、より具体的に自分の心の底をトコトン考えてみてください。

人生・会社を通じて何を成し遂げたいかが明確になれば、その結果、自らあらゆる手段を使ってそれを達成する意識・行動が自然と生まれてきます。そして、それに感化された人、協力者が集まって、皆でその大きなミッションを達成することになるかと思います。天沼さんがメンバーを巻き込み、そして、当初は居なかったエンジニアを見つけ、MINIKURAさんと出会ったように。」(榊原氏 談)

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さらに詳しく

【榊原氏が出資を決めた、エアークローゼットの詳しい説明はこちら】

エアークローゼット・天沼代表がMINIKURAとの二人三脚を語る

月額6,800円からスタイリストが選んだコーディネートを1箱でお届けする、女性向けの月額制ファッションレンタルサービス『エアークローゼット』は、開始1年半で会員数8万を突破し、確実に新しいファッションの常識を育みつつある。MINIKURAのAPIを活用してきた今までの軌跡、そしてこれからのビジョンについて、代表の天沼氏に訊ねた。 記事を見る
サマリー

【シェアリングエコノミー型ビジネスがLogiTechで成長する理由を知りたい方はこちら】

シェアリング・エコノミーの真価は「モノの移動」にこそ潜む

シェアリング・エコノミーを語る上で、見過ごされがちな領域がある。UberやAirbnbのように「人の移動」に注目が集まる一方、人の移動と同等以上の社会インパクトをもたらす「モノの移動」、言い換えれば「モノのシェア」に対する注目が十分ではないように感じる。
モノがインターネットのようにネットワーク化されたらどうなるか?
どんな新サービスが生まれるのか?
MINIKURAのように、それを具現化するためのロジスティクス・テクノロジー(LogiTech)は既に存在しているため、まずはシェアリング・エコノミー ×モノの移動というポテンシャル領域を本記事ではご紹介していきたい。 記事を見る
サマリー

LogiTech開発区へようこそ!

『LogiTech開発区』は、寺田倉庫のMINIKURAグループが運営するコミュニティです。
国内外の「LogiTech」の知識や知見を情報発信することで、
事業アイデアを持つ起業家たちを刺激・支援するコミュニティを目指します。