ポップアップショップはLogiTechで進化できる

期間限定のリアル店舗「ポップアップショップ」は、NYやロンドンのような大都市から始まり、今では東京でもよく見ることができる現代的な出店形態である。都市における地価の高さ、人口の集中といった諸問題に対する、ブランド側の現実的でスマートな解決策とも言えるが、会場の賑わいとは異なり、十分な成果をあげることは難しい。LogiTechという観点で、ポップアップショップが成功するための要点を整理した。

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ポップアップショップのプチブーム

ポップアップショップのプチブーム

読者の皆さんが、洋服や外食などファッションに興味があれば、最近いろんなブランドがポップアップショップを開催していることをお感じだろう。-バーバリー、マルジェラ、アルマーニ、hyke、カナダグース- すこし調べるだけで、ここ最近ポップアップショップを展開した有名ブランドがたくさん見つけることができる。

以前から存在している百貨店のフェアや催事との境界線が曖昧になるほど、何でもかんでもポップアップショップと名付ける傾向があるのも事実。言い換えれば、それほどまでにテナント側、ブランド側にとっては使い勝手のいい言葉として定着しつつあるとも言える。ちなみに、日本のポップアップショップのブームの火付け役を決めるならば、2013年に35年ぶりに改装した伊勢丹新宿店であろう。毎週のように、様々な人気ブランドがプレゼンテーションをする1階のザ・ステージでは、まさに週刊タブロイド紙のごとく新進ブランドが披露されている。

実は、ポップアップショップの会場となるスペースを仲介する事業者も既に存在している。米国では『Storefront』で、日本ではカウンターワークスなどがそれにあたる。同社は、ジャフコが運営する投資事業有限責任組合などを引受先とする第三者割当増資を実施し、数億円を調達したことを昨年10月発表した。また、ある調査では、イギリスでは2014年に10,000以上のポップアップストアがオープンし、市場規模は23億ポンド(約3,500億円)にも上るそうだ。

それでは、なぜこれほどポップアップショップが注目されているのか。出店戦略、そしてマーケティング戦略から探る。

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アマゾンも本格始動

アマゾンも本格始動

第一に、地価が高く出店リスクが非常に高いことが背景と言えるだろう。表参道の骨董通りなど人気の通りは、一部の人気店を除ければ、1,2年で多くのお店がコロコロ変わった。読者の皆さんも、“なぜ、ここにこういう店作るかな”と不思議に思ったことは1,2回に留まらないと思う。寧ろ、“この地域のことよくわかっている”と唸らされるような出店はほぼない。出店戦略を支えるデータや知見が足りてないのだと思う。したがって、テストマーケティングとして期間限定的に出店して、本当にこの地域が商圏になるのかをチェックできることは重要だ。

次に、マーケティング的な発想だと、リアル店舗こそマーケティング上の重要メディアと考えることもできる。昨年2月、『ブルーボトルコーヒー』は、銀座にあるセレクトショップ『アンルート』店舗内にポップアップショップを開設した。現時点でも、銀座に店舗の無い同社にとって、銀座にいる大人な客層およびアンルートのモードな客層に、製品を届ける、そしてどう受けるかを知る格好の機会となった。清澄白河までは遠くて行けないが銀座にあるなら行こうか、という人と接点を持つことができただろう。

このような2つの背景から、予算が少ない新進ブランドが試みる手法と捉えるのは早計である。あのアマゾンも実はポップアップショップをまさに展開するべく準備中と先日報じられた。具体的には、全米のショッピングモール内でポップアップショップを数十店オープンさせ、これらの店舗では人工知能型スピーカーなどアマゾンのハイテク製品をアピールする場として活用されるとのことだ。

デジタルだけではリーチできない、もしくは十分に理解されないと判断し、より庶民的な場に乗り込み、お客さんに自ら会いに行こうとしている。このことから、ポップアップショップというのは、飛び道具的なものというより、中期目線で考えたときの堅実な初手と捉えることができよう。

とは言え、必ず成功することなどない。それでは、テクノロジーを活用することでポップアップショップの成功する確率を高める方法についてご紹介しよう。

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『LogiTech』がポップアップショップを成功させる

『LogiTech』がポップアップショップを成功させる

クラウドでストレージサービスを展開することによって、誰もが箱単位で倉庫を持てることを可能にしたMINIKURAは、限られたスペース・限られた期間しか展開できないポップアップショップに伸び白を感じる。百貨店の1角でも1週間で10億円、100億円の売上を作れる方法はあるのではないか、商業施設側も賃料以外の売上項目を作れないか、と。こういった発想をできるのは、MINIKURAがITの無限の可能性を信じているからに他ならない。

同時に、MINIKURAは物流とITを融合させる『LogiTech』という発想の産物だが、物流は倉庫に限ったものではない。ネット上で話題のモノの実物を見る、試着できる、1クリックで購入できる、翌日には必ず家に届くなど、2017年の楽しいお買い物に欠かせないあらゆる体験は物流 ―保管、在庫、郵送、決済― が支えている。言い換えると、LogiTechという発想は、各ブランドや商業施設が提供しているお買い物体験をもっと快適で楽しいものへとアップデートさせ、ポップアップショップの限界性を凌駕していくことができる、というものだ。

例えば、高い機動性がポップアップショップ普及の要因だが、IT活用は遥かその上を行く。双方向性・リアルタイム性というITの利点を享受した最新のマーケティング手法がその一例だ。短時間かつ低予算で実施できる「A/Bテスト」は、ポップアップショップ出店時の地域や商業施設、テーマそれぞれで何が筋が良いのかチェックできる。具体的な方法としては、同じ訴求内容(例えばブルーボトルコーヒー)を、銀座好きな方1,000人と日本橋好きな方1,000人に同時に見せたときに、どちらの方が好反応かを見ることで次のポップアップショップの候補地を論拠立てて検討することができる。
商業施設側の立場で同様の手法を応用すれば、銀座に商業施設を所有していた場合、銀座好きな方に、コーヒーと日本茶を同時に見せて反応を見ることで、テナントとして誘致すべき業態が分かる。

もちろん、データだけで決めることができないかもしれないが、感性で導いた非常に筋の良さそうな2つのポップアップショップ候補地があった場合、決め手となる示唆を直ぐに手に入れることができるのがテクノロジーの利点だ。

機動性と同様に評価するべきポップアップショップの特長は、体験性にある。約20兆円にまで広がってきた日本のEC市場では、オンラインだけで販売するブランドが増加傾向。先述した出店リスクを鑑みると、当然の意思決定とも言える。ただし、SNSなどのデジタルツールをいかに駆使しても、ワクワクしながら店舗に足を運び、楽しみにしていた商品との出会いは演出できない。先のアマゾンのように、先端的な機器も使ってもらって人間味を感じられなければ、なかなか生活に取り入れることは難しいだろう。

デジタルマーケティングには、商品の認知から関心、理解、検索、購入までの長いプロセスを旅に例えた「カスタマージャーニー」という言葉があるように、お客様がどのようにブランドを体験するかを全体設計する視点が重んじられている。お店に行くことが“面倒”ではなく“楽しみ”に変わるようにするには、前後でどのような体験や情報を提供すればいいのかを考えることに他ならない。例えば、認知から決済までの距離を一気に縮めた“買えるファッションショー”(有名なのはTGC、最近では『アレキサンダー・ワン』の"see now buy now"方式)は、決済機能を持つスマホが普及して実現した新しい流通形態であり、LogiTechそのものだと言える。

LogiTechは、現状のカスタマージャーニーでの課題を洗い出し、ポップアップショップの役割をうまく照らし合わせることで、認知から購入までを円滑に進められる体験を演出する。言い換えれば、カスタマージャーニーを描くために、最適な物流や店舗形態を考え、確度の高いポップアップショップを逆算できるのがLogiTechの可能性である。

さて、ポップアップショップそのものが中期戦略における初手と前頁で触れたが、テクノロジーを活用することで確度を高めることができる。最後に、提携企業であるエアークローゼットの新しい取り組みを紹介したい。

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エアークローゼットの初出店

エアークローゼットの初出店

MINIKURA APIを利用する、女性向けファッションレンタルサービスを展開する『エアークローゼット』は、賃貸住宅情報のエイブルと組んで、昨年10月に原宿に初出店することに至った。ここではエアークローゼットが提供するファッションレンタルのパーソナルスタイリングを体験できるほか、予約不要で洋服をレンタル、そのまま着替えて出かけるといったことが可能。1階はファッションレンタル、フィッティングルームで、2階にはコスメ・カフェスペースを備えている。

エアークローゼットがリアルクローゼットになったという訳だが、これは前頁で触れたデジタル活用を駆使すれば、ポップアップショップとは明言してないものの、同社にとって今回はかなり良いテストマーケティングになり得るだろう。データドリブンなマーケティングを日頃から実践している同社だけに、今回のプロジェクトからどのような示唆を導出するのか注目したい。もちろん、エイブルにとっても、来客層やアイテムなどの傾向を見ることで、今後強化すべきエリアや物件特性を掴むことができ、Win-Winの場になる。

このように、テクノロジーの活用を視野に入れることで、街で展開されるポップアップショップへの見方も変わるだろう。なぜ、ここに出店? この出店で得られるものは? 認知から決済までの距離は今までの施策より変わっているのか? など。

今後も、ポップアップショップへの観察は続け、提携企業へのノウハウ提供に活かしていきたい。

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【生活者目線を汲み入れた物流でデリバリーサービスを始めた起業家の話はこちら】

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年率5%で成長しているアウトドア市場において、ITを駆使した風雲児が存在する。キャンプ場やキャンプ用品などを紹介する情報サイト『hinata』を運営するvivit社だ。キャンプ場の前時代的なサイトに目をつけ、キャンプ情報を知りたい人に適切に届ける情報流通を進めてきた。そして、次なる事業展開として、キャンプ用品を預かり、全国のキャンプ場に届ける『hinata trunk!』を、出資企業である寺田倉庫と開始した。今回は、『hinata trunk!』を通じてシェアリングエコノミーの実現を構想するvivitの水谷代表と、出資を決め二人三脚を始めたMINIKURA執行役員・月森氏に、提携の経緯や狙いを訊ねた。 記事を見る
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